令和6年4月1日から、「相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得することを知った日から3年以内に相続登記をすること」が法律上の義務になりました。
不動産をお持ちの方が亡くなったとき、相続人のみんなで財産の分け方を話し合って、不動産をもらった人は相続登記をする必要があります。
「正当な理由」がないのに3年以内に、相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
(亡くなったことを知らない、又は、亡くなったことは知っていても、その方が不動産を持っていることを知らない場合は義務はありません。)
相続登記義務化について、詳しく説明していきます。
※令和7年6月現在の情報です
◇期限について
知った日から3年とは、どの期間を言うのでしょうか。
令和6年4月1日以降の相続の場合
相続が開始して不動産の取得を知った時点から3年以内に申請が必要です。
(例)令和7年6月5日に知った場合
↓
令和10年6月4日まで
令和6年4月1日以前の相続の場合
新制度がスタートした令和6年4月1日から3年以内に申請が必要です。
(例)平成18年7月1日に知った場合
↓
令和9年3月31日まで
※新制度スタートの令和6年4月1日から3年後
遺言書があった場合
遺言によって土地や建物が自分のものになった人は、そのことを知った日から3年以内に
遺言の内容をもとに登記申請をする必要があります。(相続人申告登記の申出でも〇)
◇罰則について
「正当な理由」がないのに3年以内に相続登記をしない場合、10万円以下のお金の罰を払う可能性があります。
「正当な理由」とは…
① 相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
[説明]
相続人が50名ほど以上の多数で、その中の一部の相続人の戸籍等収集が困難で、相続人一人一人の生死や住所を調べて相続人全員がわかるのに数年かかる可能性がある場合
(具体例)
1,相続人の所在が不明
2,相続人が海外に居住している
3,相続人同士の連絡がとれない
などの複数の事情が重なりで、戸籍等収集にかなりの時間がかかる場合

② 遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
[説明]
相続人の間で、遺言書が本当に有効かどうかや、どの財産が遺産なのかについて争いがあり、不動産を誰が相続するのかまだはっきりしていない場合
(具体例1)遺言書の内容に争いがある
亡くなった人の遺言書に不備があり(署名が不明瞭など)、相続人の一部が「この遺言書は無効だ」と主張していて、裁判で決着をつけるまで不動産を誰がもらうか決まらない
(具体例2)遺言の内容が曖昧で解釈が分かれる
遺言書に「長男に土地を譲る」と書かれているが、どの土地のことか具体的に書いておらず、複数の土地のうちどれを指すのか相続人同士が対立している

③ 相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
[説明]
亡くなった人の不動産の名義を変える(=相続登記)必要がある人が、自分自身の病気や、同じくらい大変な事情でその手続が難しい場合
(具体例1)
脳梗塞などの重い病気で寝たきりになっている
(具体例2)
認知症が進行して判断能力がない
(具体例3)
重いうつ病などの精神疾患により長期入院している
(具体例4)
交通事故で重傷を負い長期入院している
(具体例5)
地震や水害の被害などの災害により避難生活をしている

④ 相続登記の義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
[説明]
DV被害にあって施設に逃げている状態にある人
⑤ 相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合
[説明]
生活が苦しくて公的な支援を受けている、支援を受けていなくても収入が極めて少なく経済的に困っている場合
(具体例1)
生活保護世帯
(具体例2)
一人親家庭で子どもを育てながら働いているが生活がギリギリの状態にある人
過料手続きの流れ

①法務局の登記官が調査して相続登記していないことを知る

②相続人に相続登記をきちんとするように催告する


1.催告に応じて相続登記申請をした場合
過料事件の通知はされない(罰則なし)
2.正当な理由なく申請をしなかった場合

過料事件の通知が裁判所に行き、要件に該当するか否かを判断し、過料を科す旨の裁判をする
◇期限内に相続登記できない場合
相続が開始して3年の期限内に相続登記をすることが難しい場合、「相続人申告登記」という比較的に簡単な手続を法務局にとって、一時的に相続登記の義務を果たすこともできます。
「相続人申告登記」とは・・
不動産を相続した人が、相続人みんなでどう分けるか誰がもらうかの話し合いが終わっていないなどの理由で、相続登記ができないときに、
法務局の登記官に「私が不動産の相続人です」と申し出て氏名・住所を登記してもらう制度です。
これをすると、3年以内にしなければならない相続登記の義務を果たしたことにできます。
「相続人申告登記」は、「とりあえずやる登記」です。(遺産分割協議が成立した場合は、相続登記をする必要があります)
※不動産を売るには、必ず通常の相続登記を入れる必要があります。

「相続人申告登記」のメリット
①この申出がされると、申出をした相続人の氏名・住所等が登記されて、3年以内の相続登記の義務を果たしたことになります。
つまり、10万円以下の過料罰則の対象外になります。(申出した相続人以外の残りの相続人は過料対象になります。)
②全ての相続人を把握するための戸籍は不要なので、戸籍収集の負担が軽くなります。
③相続人が複数人いる場合でも特定の相続人が単独で申出することができます。
一人の相続人が他の相続人の申し出を代理してすることもできます
(代理で申し出る場合は委任状が必要です。複数の相続人が連名で申出書を作成・提出する場合、委任状は不要です。)
④登録免許税がかかりません。
相続人申告登記の必要書類
➀申出書‥法務局のサイトにひな形があります。
➁申出人が、登記名義人の相続人であることを証明する戸籍謄本
③申出人の住民票
◇まとめ
令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。
土地や建物を相続で取得した人は、3年以内に相続登記しないと10万円以下のお金の罰則の対象になります。
令和6年4月1日以前に土地や建物を相続で取得した人は、
令和9年3月31日までに相続登記しないと10万円以下のお金の罰則の対象になります。
相続登記はお早目に手続されることをおすすめします。
遺産分割の話し合いがまとまった場合
遺産分割の結果に基づく相続登記
(不動産の相続を知ってから3年以内にする必要があります)
早期に遺産分割をすることが困難な場合
「相続人申告登記」
(不動産の相続を知ってから3年以内にする必要があります)
司法書士は相続登記、法務局提出書類の作成の専門家です。
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